旧料亭菊水

建物外観    鏝絵

 建物外観                           鏝絵

1階北室 2階南室

  1階北室                   2階南室

 

国登録の年月日

平成27年8月4日

所在地

新城市大野字上野

年代

大正後期

登録理由 

別所街道の大野宿に所在する元料亭の建物。上下階に6畳間の座敷が2室あり、床や棚を飾るきれいで垢抜けた佇まいとなっている。

また型板ガラスを多用したガラス窓は明るい開放的な空間を作り出し、2階外壁には奴と雀、竹林を巧みに描いた鏝絵が見られ、料亭らしい遊興的雰囲気を醸し出していると評価される。

(登録理由:再現することが容易でないもの) 

詳細内容

構造、形式及び大きさ

 木造2階建、瓦葺、建築面積37㎡

内容

  新城市・大野地区は静岡県・秋葉山と愛知県・鳳来寺山を結ぶ街道の宿場町として栄え、江戸時代は徳川幕府の天領となり、明治期には別所街道の整備とともに製材業や養蚕・製糸業が盛んになり、奥三河の経済の中心地的役割を果たす重要な地域となった。

 旧料亭菊水は大野地区の中心地に所在する。この建物は、旧大野銀行(現 大野宿美術珈琲鳳来館、国登録文化財)に隣接している現在地で、地元住民が大正時代に料亭と肉屋を始め、通りに面した店先を肉屋とし、敷地の奥に「菊水」という名称の料亭として新築したことが始まりとされる。

 建物は2階を客室とし、1階を管理人の居室兼管理事務室として建てられ、台所は別棟に作られていたものと考えられている。

 1階は南北に2間続きの和室がある。南側の部屋は、一間の床の間と飾り棚が西側に設けられた横長の六畳室であり、その東側に半間の縁側が続いている。北側は六畳室を縦長に配し、西側に帯戸構えの2間の押入があり、東側は幅半間で長さ二間の玄関となる。ここではさらに建物を東側に突出させ、2階へ登るための玄関口が設けられている 

 1階の6畳2室の天井は根太天井で、壁は中塗仕上で質素な造りとしている。南側の床は杉絞り丸太の床柱を用い、框、床板は栃の木である。地袋の戸は框を春慶塗とし、天板は栃板を用いている。南側のガラス障子戸は幅3尺の4枚引違とし、横桟は4段とし、上段は細い横桟、中段は額付のガラス窓、下段は縦桟の透明ガラスを用い最下段は腰板を張るなど凝った造りの障子戸で、ガラスは型板を用いている。

 2階は6畳室2室を南北に横長に並べ、中央に畳敷の半間の廊下を取り、西側に半間幅の床の間、床脇、押入を配し、東側に半間幅の縁甲板張の廊下となっている。東側廊下の北端に東側に突出させて半間幅の便所を配し、南側に接して階段室を配している。

 2階6畳室は竿縁天井の猿頬竿縁とし、杉柾目板張、長押を廻す。床は栃虎杢の釣束で床脇との連続性を持たせ、狭い空間にゆとりを感じさせている。違棚の棚板、床板は栃板を用いている。南側ガラス障子戸は三段とし、上段は縦桟、中段は額入り、下段は煉瓦積の組子とするなど上品な意匠を用いている。壁は「あさぎ」仕上である。北側室の違棚は、栃板虎杢板を用いていて上等な造りである。東側廊下との間仕切は障子戸で縦桟の雪見障子としている。同廊下北端の便所の戸は腰高ガラス戸でガラスは型板ガラスを用いている。また階段室2階部分のガラス窓は同様に型板ガラスを用いている。

 型板ガラスの建具は統一されていて、これが後世の改造時とは思われず、外壁の奴の鏝絵が作者の年齢から昭和初年としていることから、大工、左官などの職人技術が最高になった大正時代後期頃の建築と推測される。国産の型板ガラスが本格的に造られた時期を示すガラス建具を豊富に用い、新しい時代の和風建築を伝える遺例の一つとして貴重である。

 平成24年に屋根葺替、部分修理が行われたが、建具、室内木部、土壁など当初材の保存状態は比較的良好である。