「レイヤーケーキ」といえば、ケーキ地の間にジャムやらチョコレートやらをはさんだもので、レイヤーとは辞書風には「階層」「層」のこと。「重ね着」は「レイヤード」ですね。

 

 コンピューター上の地図情報システムでも、何枚もの異なった種類の絵を重ね合わせてたくさんの情報を提供したり、あるいは対象物件を地図上で管理したりするわけだが、このときの1枚1枚の絵のことをレイヤーと呼ぶそうだ。

 

 たとえば一つの地域の土地について、所有者ごとに分けたもの、地籍上のもの、利用現況ごとのもの、都市計画や農地、森林計画ごとのもの、それに道路、鉄道、河川の地図、公共機関の位置図、等高線地図、地質地盤図などなどを重ね合わせておけば、「私有地で、複数者が所有し、耕作放棄された農地で、主要道路から50メートル以内の距離にあって、市役所から半径5キロ以内に位置し、ゆるやかな斜面の南側に面し、岩盤質ではない土地」といった風に、任意の条件をつけてそれがどこに、どれほどあるかが、すぐに割り出せる。

 

 一つの土地にも、膨大な情報が埋め込まれている。その種類ごとで区域区分が異なってくるので、土地利用の総合的コントロールのためには、こうした重ね絵手法が欠かせない。

 

 2月12日付けブログ(『県境域のダイナミズム』)で指摘したように、地域・圏域のあり方を考えるには、幾重にも堆積した土地の歴史層を念頭に置かねばならない。ちょうどこのレイヤーのように。

 

 いまわれわれは合併後の地域組織のあり方を、新たに方向づける必要に迫られている。行政区のあり方が、旧3市町村でかなり違っていたという事情もあるが、それ以上に、これからの市民自治と分権の基礎組織をどうするかを、衆知を集めて決定していく必要があるからだ。

 

 その地域区分に分け入っていくと、合併以前の市町村境界はもとより、半世紀前の昭和合併前の境界(いまの大字とかぶってくる)、明治合併前の村落区分(小字に対応することが多い)、土地所有にからんだ財産区、小中学校の学区、祭礼による結合、消防団組織の区分、公民館・コミュニティ活動の編成などなどが、複雑にからみあっている。

 

 どのレイヤーを選び、どのレイヤー同士を重ね合わせるかで、境界線はかなり違ってくるが、さらにそこに、面積、人口、戸数、高齢化率、家屋の連たん性、公共交通機関や医療機関との距離などの生活利便性や地域がまとまるに必要な諸条件を加味していくと、複雑きわまりない方程式ができあがる。

 

 しかも一番重要なのは、住民多数の前向きな合意。納得。相互理解。

 

 どの絵を重ね合わせるか、何を重点に置くか、新しい地域自治のための模索を、折にふれて報告していきたい。