レクイエム―設楽ダム調印式
昼のニュースで速報され、その後全国メディアもいっせいに取り上げたので、概要はご存知のとおり。
私も下流域市町の一員として、列席させていただいた。
レクイエム=鎮魂歌。
調印式から受けた印象を一言でいえば、この言葉が浮かぶ。
ダム対策協議会の会長は、昨日においても最後まで「設楽ダムとの戦い」と表現された。妥結にいたり、生活再建を求める段階に移るにおいても、なおこの36年間は「戦い」としか言い表せない。
それが個人の心情か、といえばそうではない。
会長はあいさつのなかでいみじくも、語られた。
「今日の結末を見ることなく先立った仲間が大勢いる。自分の妻もその一人だ・・・」
先立った戦友たちは、今日のこの結末をどう見ているか?それが対策協はじめ、36年間をダム問題で明け暮れてきた方々の脳裏を離れることはない。
だから今もなお「設楽ダムとの戦い」なのだ・・・・私はそんな風に聞かせていただいた。
水没者の皆さんは、これから「生活再建」に入っていくわけだが、そこにもさまざまな葛藤が待ち受けている。
だからこそ、渦中にいる方々は、ともに戦い、先立った伴侶や友を心のなかに置き続けて、後の人生を引き受ける、新たな「戦い」に出発するしかないのだ。
そして調印式で、設楽町長は、「重い決断ではあるが、ダム問題を解決し、乗り越えない限り設楽町の明日はないと判断し、満を持して決断にいたった」と、宣言された。
そう、これからも設楽町に暮らし続ける人々、これから設楽町で産まれる未来の人々のためには、どこかで結論をつけなければならない、それが今だ、と。
36年の時間をダムサイトに埋め込む覚悟にあふれた意思表明だった。
最終決定者としての重責を果たされた、その労に心から敬意を表したい。
過去と未来の両面から、両方の意味で、レクイエムの調印式だった・・・・。









